同友会で学んだ「姿勢」の本質と恩をつなぐ使命

Business Plan
変革は自分から始まる
【幼少期に経営の光と影を目の当たりにして】
島田慶資氏は徳島県小松島市、かつて年間200万人が行き交う繁栄した港町で育った。祖父母と母が営む”竹ちくわ”のお土産店を手伝いながら、働く大人たちの姿、観光客の賑わい、そして「ありがとう」と言われる喜びを間近で見てきた。商売とは人を幸せにする仕事である——そんな価値観が自然と少年の心に根付いていった。

しかし、その繁栄は突然崩れ去る。事業承継の誤りによって経営が迷走し、さらに鳴門海峡大橋・明石海峡大橋の開通によりフェリー需要が激減。港町は一気に衰退した。家業は廃業、叔父と祖母は自己破産、闇金融からの督促が自宅へ届き、母は精神疾患を患った。
幼い島田氏は、経営が人を幸せにする側面と、不幸に陥れる側面の両方を体験することとなった。「経営の重さを身体で知った」と島田氏は振り返る。この原体験が、後に「経営者の姿勢とは何か」を追求する大きな原点となる。
【逃避としての創業、そして徹底的な失敗】
家族の不幸と家庭崩壊を背景に、島田氏は実家を離れて工業高専の寮へ入り、経営を避けるように生きてきた。しかし不思議なことに進学先は経営情報システム工学科、就職先は経営コンサルタント会社と、気づけば経営の道に戻っていた。

ところが就職先は長時間労働が常態化しており、「できない人が悪い」「使えない人は切り捨てる」という思想が島田氏の中に深く染み込んでいく。3年で独立すると宣言していた島田氏は、その通りに2009年に創業したが、それは理想や志ではなく「逃げるための創業」だったという。
理念も目的もなく、価値観はブラック企業時代のまま。社員には「なんでできないのか」「勉強不足では」と責めるばかりで、人は育たず離職率は99%。採用しては辞め、教育しては辞め、仕事は前に進まず、月商2万円の月もあった。キャッシュも枯渇し、コンビニでカード現金化をして凌ぎ、自宅で嘔吐して倒れ込むほど精神的に追いつめられた。
「誰が悪いのか」「なぜ私だけが」——島田氏は責任を外へ向け続け、同じ失敗を繰り返していることに薄々気づきながらも、どう抜け出せば良いか分からずにいた。
【「人間性が低い」という言葉が変えた経営者人生】
転機となったのは、山形同友会への入会だった。先輩社長の紹介で同友会に入り、「経営指針をつくる会」を受講するよう促された島田氏だったが、当初は何も学べなかったという。
「『理念の成文化』は成分表のことかと思い、『共育』は責任逃れの言葉に聞こえ、全てが言葉遊びのように感じられました」
理由は明確だった。経営者としての姿勢が崩れており、学ぶ器が整っていなかったのだ。
経営理念をつくる過程で、先輩経営者から「島田さんは人間性が低い」と真正面から指摘された。その言葉は受け入れ難いものだったが、後にその意味を深く理解することになる。

「理念とは文章を作る作業ではなく、経営者のあり方を整える作業だったんです」
島田氏は初めて社員に向き合い、「会社を良くしたい。力を貸してほしい」と伝えた。すると社員は協力してくれ、付箋を使った理念づくりでは、社員の想いが次々と言葉となって溢れてきた。島田氏は初めて「仲間と同じ方向を向く」感覚を知ったという。
理念づくりを通じて、会社は少しずつ変わり始めた。社員から「東京に勉強に行こう」という提案が出るほど、主体性が芽生えていった。それは創業以来、初めて感じた確かな希望だった。
【リーダーシップとはスキルではなく「姿勢」である】
「私が学んだ結論は、リーダーシップとはスキルではなく『姿勢』であるということ」と島田氏は語る。それは、
①自分の軸を持つこと、
②人を見捨てないこと、
③目的から逃げないこと、
の三つに集約されるという。

経営者の自覚とは「自分が背負うべきものの重さを正しく知ること」であり、社員の生活、家族の未来、地域との関係など、逃げられない責任を自ら引き受ける理解を持つことだ。また経営者の覚悟とは「どんな結果も自分が引き受ける」と決める姿勢そのもので、成功も失敗も、すべてを他責ではなく自責で受け止める決意である。

この姿勢が整ったとき、初めて組織は同じ方向を向き、仲間は力を発揮し始めるという。
現在、島田氏は「観光業における幸せなあり方を提案する」という10年ビジョンのもと、人を生かし、地域に貢献する経営に挑戦している。平均年齢33歳という若い組織ながら、伴走支援というスタイルでお客様の悩みに寄り添い、着実に成果を出し続けている。
かつて経営で家族を失い、逃げ続けていた島田氏が、今は経営を通じて人を幸せにする未来を語れるようになった。「変革とは他人ではなく、自分から始まる」——その言葉には、島田氏自身の血の通った経験が込められている。
【恩を次の世代につなぐ使命】
インタビューの最後、島田氏は山形同友会への感謝を口にした。
「こうした学びの根幹には山形同友会との出会いがあります。私は同友会で多くの方に育てていただき、経営者としての姿勢を整える機会をいただきました。その恩は計り知れません。だからこそ今度は自分が次の世代に恩を送る番だと感じています」

現在、島田氏は「経営指針をつくる会」で学びのサポート役として関わり、受講生の悩みや葛藤に触れながら、実は自身も毎回新しい気づきをいただいているという。
「人の成長に寄り添う中で自らも成長する。
この循環こそが、同友会から授かった大切な財産です。
私は、これからも学びをつなぎ、
地域に向き合う経営者として成長し続けたいです」
幼少期に目の当たりにした経営の光と影。逃避と失敗の日々。そして同友会との出会いによる劇的な変化。島田慶資氏の歩みは、経営者にとって最も大切なものは何かを問いかけている。

それは、テクニックでもノウハウでもなく、
自らの「姿勢」を正すこと。
そしてその姿勢は、一人では整えられない。
仲間との学び合い、育て合いの中でしか磨かれないものだ。
島田氏の言葉は、今まさに経営に悩む
多くの経営者への希望のメッセージとなっている。
ハンズバリュー株式会社
島田 慶資(しまだ けいすけ)
ハンズバリュー株式会社 代表取締役
2009年創業、中小企業・小規模事業者を対象に経営コンサルティング及びマーケティング支援を提供。行政機関からの支援依頼も多く、温泉旅館、ビジネスホテルなど宿泊業の売上改善実績多数。山形県中小企業家同友会 経営指針をつくる会第19期卒業。エフエム山形で経済コメンテーターとしても活動。
ハンズバリュー株式会
社
https://handsvalue.co.jp/
本社:山形県山形市松栄1丁目3-8 山形県産業創造支援センター102
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