タンスの着物に新たな命を! 秋葉春光堂のアップサイクルが紡ぐSDGsの物語

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老舗表具店が紡ぐアップサイクルの物語
着物の新たな可能性を切り開く
山形市十日町四丁目に店を構える表装処 秋葉春光堂が、着物を活用したアップサイクル企画を始動し、地域内外から注目を集めている。この取り組みは、タンスに眠る着物を短冊掛け、ファブリックパネル、屏風、しおりといった新たなアイテムに生まれ変わらせるもので、SDGsの理念である「つくる責任・つかう責任」を体現する試みだ。近年、世界的に環境問題が深刻化する中、アパレル産業は「世界で2番目に環境汚染を引き起こす産業」と言われる。日本の衣類廃棄量は年間約50万トンに及び、その中には洋装の普及に伴い出番を失った着物も含まれる。推定では、日本に数千万から数億枚の着物がタンスに眠っており、年間100トン以上が廃棄されているとされる。こうした現状に対し、秋葉春光堂は伝統の技を活かし、着物を現代の生活に再び取り入れることで、環境負荷の軽減と文化の継承を目指している。この取り組みは、地域のものづくり文化と環境意識を融合させ、山形から新たな価値を発信する挑戦として注目に値する。
伝統の技と想いが織りなすアップサイクル
この企画の中心にいるのは、一級和裁士の秋葉真理子氏と、表具師の秋葉雅人氏の夫妻だ。真理子氏は白鷹紬を織る小松織物工房に生まれ、幼少期から着物に親しんできた。和裁士として長年、着物を仕立てる中で、扇には円満、椿には厄除けといった文様や柄に込められた深い意味に魅了されてきた。

一方で、現代では着物を着る機会が減り、形見や遺品としてタンスに眠る着物が増えている現状を目の当たりにし、「このままでは日本の大切な文化が失われてしまう」と危機感を抱いていた。夫の雅人氏とともに、「人を飾った着物を部屋を飾るモノへ」とアップサイクルするアイデアを思いついた。試行錯誤の末、着物の生地を活用した短冊掛けやファブリックパネル、屏風などの制作にたどり着いた。このプロセスでは、着物の美しさや物語性を損なわず、現代のライフスタイルに合う形に仕上げることにこだわった。持ち込みの着物だけでなく、白鷹紬を使った作品も提供し、形見分けや法要のお返しとしての複数制作にも柔軟に対応。顧客の想いを形にするサービスは、単なるリメイクを超えた心のこもった取り組みとして評価されている。

多彩な商品とその魅力
秋葉春光堂のアップサイクル商品は、着物の持つ独特の風合いや文様を活かし、現代のインテリアにも調和するデザインが特徴だ。商品ラインナップは幅広く、たとえば縦100cm×横30cmの短冊掛けは50,000円、30cm四方のファブリックパネルは6,000円と、手頃な価格から提供されている。12cmのしおり10個セット(10,000円)は、ちょっとした贈り物や記念品に最適で、豪華な二曲一隻の屏風(縦170cm×横360cm、120,000円)は、特別な空間を演出する一品として人気だ。制作期間は商品の規模やデザインの複雑さにより2週間から2か月程度で、一点一点、熟練の技で丁寧に仕上げられる。

これらの商品は、着物の持つ歴史やストーリーを現代の生活空間に取り入れることで、家族の思い出や故人との絆を身近に感じられるアイテムとなっている。また、白鷹紬を用いた作品は、山形の伝統工芸の美しさを再発見する機会を提供し、地域の誇りを次世代につなぐ役割も果たしている。顧客からは、「祖母の着物が部屋に飾られ、毎日思い出が蘇る」「モダンなデザインで若い世代にも受け入れられる」といった声が寄せられており、幅広い層に支持されている。

地域と未来をつなぐ一歩
秋葉春光堂の取り組みは、単なるリメイクや商品開発にとどまらない。地域の伝統文化と環境意識を融合させ、持続可能な社会に向けた一歩を踏み出す試みだ。着物をアップサイクルすることで、廃棄物の削減に貢献するだけでなく、故人の思い出や家族の絆を次世代に引き継ぐ役割を果たしている。さらに、白鷹紬をはじめとする地元の素材を積極的に活用することで、山形の伝統工芸の価値を再評価し、地域経済の活性化にも寄与している。中小企業家同友会山形支部では、こうした地域に根ざしたSDGsの実践を高く評価し、会員企業による新たな挑戦のモデルケースとして注目している。

秋葉夫妻の情熱は、山形のものづくり精神を象徴するものであり、伝統と革新が交錯するこの取り組みは、他の地域や業界にもインスピレーションを与える可能性を秘めている。今後、秋葉春光堂はワークショップや展示会を通じて、着物のアップサイクルをさらに広め、環境問題への意識を高める活動にも力を入れる予定だ。山形から発信されるこの小さな一歩が、持続可能な未来と地域文化の継承に向けた大きな希望の光とあり続けるべく、秋葉社長が奮闘を続ける。

表装処 秋葉春光堂
https://www.akiba-shunkodo.jp/
山形県山形市十日町四丁目 6-17
TEL.023-622-9765
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