山形県高畠町で地元食材を活かしたケーキや焼き菓子を製造・販売する菓子工房COCOイズミヤ。代表取締役の庄司薫氏は、子どもたちの夢を応援する「夢ケーキ」プロジェクトを展開。子どもたちが夢を描いたケーキを作り、発表することで夢への第一歩を踏み出す機会を提供している。庄司氏自身も中小企業家同友会の学びを活かし、経営指針の浸透を図り、理念と方針を共有することで事業の科学性と社会性を追求している。

高畠町は、種なしブドウ「デラウェア」の生産量日本一やラ・フランス発祥の地として知られる実り豊かな「東洋のアルカディア」。1923年に庄司氏の曾祖母が創業した和菓子店「和泉屋」がココイズミヤのルーツ。庄司氏は小学生時代に食べたケーキに衝撃を受け、パティシエを志す。東京での修業を経て1980年に故郷に戻り、家族とともに菓子作りを続けた。
2006年、家族の病気で店を一時閉鎖後、株式会社化し庄司氏が代表に就任。しかし、経費増や経営知識不足で苦戦。中小企業家同友会の経営指針セミナーに参加し、「心に響くおいしさで元気と笑顔を届ける」「人々の想いをつなぎ地域に夢を広げる」などの経営理念を策定。初めは社内で反発もあったが、理念を貫く覚悟を決め、社員と共有することで一致団結を図った。

経営理念は菓子作りや店舗運営に反映されている。地元産デラウェアを使った冬季限定バターサンド「こりすのふゆじたく」は、生産者の想いをつなぐ商品だ。月次会議では全社員が経営状態や目標を共有し、志をひとつにする。入社2年目の社員は「発言しやすい雰囲気で、経営への参画を実感できる」と語る。
「夢ケーキ」は、子どもたちが夢を描いたケーキを作り、家族で語り合う企画。10年前から幼稚園や学校で開催し、コロナ禍ではクラウドファンディングでキッチンカーを購入。「どこでも夢ケーキ」を実現し、230万円以上の支援を集めた。

2023年、創業100周年を迎えたCOCOイズミヤは、「株式会社菓子工房 ココ・デ・カシェットイズミヤ」としてフルリニューアルオープン。高畠町の豊かな自然と調和する新店舗は、建物と看板が一体となり、さり気ない存在感を放ちながら地域の景観に溶け込む。敷地選びでは「遮るものがない高畠の美しい風景」を重視し、四季折々の自然を眺めながらゆったりとした時間を過ごせる空間を実現。店内にはイートインやカフェ機能を備え、地元の旬の果物や素材を使ったお菓子を通じて心が満ち足りる体験を提供する。

中小企業家同友会の学びを活かし、経営指針を店舗運営に浸透させた庄司氏は、事業の科学性と社会性を追求。地元生産者との連携を深め、地域の魅力を発信する商品開発やイベントを展開し、時流に合わせた運営で地域コミュニティの核となることを目指す。リニューアル後の店舗は、子どもたちの夢を応援する「夢ケーキ」の拠点としても機能し、地域の子どもや家族が集う場として新たな価値を創出。地元住民や観光客が集まるランドマークとして、COCOイズミヤは高畠町の文化と歴史を未来につなぐ役割を担っている。